高齢者の方やそのご家族の方が、老人ホームや介護施設を探す際に気になるのが、費用やサービスの内容ですよね。しかし、施設によっては介護保険が適用されるものとされないものがあり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。今回は、介護保険が適用される施設と適用されない施設の、それぞれの種類と特徴や費用について、分かりやすく解説していきます。
介護保険が適用される施設とは
介護保険が適用される施設とは、国や公共団体、社会福祉法人が運営する公的施設のことです。介護保険施設には、以下の4種類があります。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
それぞれの施設は、介護の目的や内容が異なるため、入所条件や入所期間、サービス内容も異なります。入所を希望される際は、よく確認しておきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホームは、要介護度3以上の高齢者が入居できる施設で、身体介護や生活支援などのサービスを受けられます。特別養護老人ホームは、常時介護が必要となる方の生活の場であり、手厚い介護サービスが提供されています。そのため介護職員が24時間常駐し、昼夜問わず対応してもらえることが可能です。長期入所もでき、看取りを実施している施設もたくさんあります。
特別養護老人ホームの入所条件は、要介護度3以上であることが原則です。ただし、特例で要介護1・2の方も認められる場合があります。また、年齢が65歳以下の方も、特定疾病にかかり、介護が必要な状態であれば入所を認められています。
特別養護老人ホームの月額費用は、5万~15万円が目安です。月額費用のおおまかな内訳は「介護保険サービス費」と「生活費」です。介護保険サービス費は、介護度に応じて定額の料金を支払います。介護度が重いほど支払金額が高くなります。生活費の内訳は居住費(居室の賃料)と食費、理美容代やおやつ代など個々にかかる日常生活費です。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、在宅復帰を前提に入所できる介護保険施設です。そのため、機能維持・改善を目的としたリハビリを提供しています。介護職員以外に医師や看護師、リハビリの専門スタッフも配置されているのが特徴です。入所期間は原則3カ月ですが、必要に応じて入所継続となります。平均入所期間はおよそ1年です。
介護老人保健施設は、要介護1から入所可能です。原則65歳以上、特定疾病の認定を受け介護が必要と判断された40~64歳までという年齢条件は、特養などと同じです。施設によって細かな条件は異なりますが伝染病などの感染症リスクがないこと、病気で長期入院が必要にならないことも条件となります。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
介護老人保健施設の月額費用は、6万~17万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。介護サービス費は介護度に応じて月額費用は異なりますが、おおむね2万~3万円台です。ただし手厚いサービスを受けると介護サービス加算が発生し、費用がかさみます。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は、医学的管理が必要な要介護1以上の高齢者が入居できる施設で、医療的管理や理学療法などのサービスを受けられます。介護療養型医療施設は、医療機関としての機能を持ちながら、介護保険施設としても認可されている施設です。そのため、医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフと介護職員が連携して、高度な医療と介護を提供しています。入所期間は原則3カ月ですが、必要に応じて入所継続となります。平均入所期間はおよそ1年半です。
介護療養型医療施設の入所条件は、要介護1以上であることと、医学的管理が必要であることです。医学的管理が必要とは、病気や障害により、医師の診察や処方、看護師の看護や薬剤師の薬物管理などが必要な状態を指します。例えば、糖尿病や高血圧などの慢性疾患や、脳卒中や骨折などの急性疾患で、在宅生活が困難な方が該当します。また、年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、主治医意見書や診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
介護療養型医療施設の月額費用は、7万~20万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と医療サービス費、居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。介護サービス費は介護度に応じて月額費用は異なりますが、おおむね2万~3万円台です。医療サービス費は、医師の診察や処方、看護師の看護、薬剤師の薬物管理などの費用で、月額費用は施設によって異なりますが、おおむね3万~5万円台です。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。
介護医療院
介護医療院は、医療的管理が必要な要介護1以上の高齢者が入居できる施設で、医師や看護師による医療的管理やリハビリテーションなどのサービスを受けられます。介護医療院は、介護療養型医療施設と同様に、医療機関としての機能を持ちながら、介護保険施設としても認可されている施設です。そのため、医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフと介護職員が連携して、高度な医療と介護を提供しています。入所期間は原則3カ月ですが、必要に応じて入所継続となります。平均入所期間はおよそ2年です。
介護医療院の入所条件は、要介護1以上であることと、医学的管理が必要であることです。医学的管理が必要とは、病気や障害により、医師の診察や処方、看護師の看護や薬剤師の薬物管理などが必要な状態を指します。例えば、糖尿病や高血圧などの慢性疾患や、脳卒中や骨折などの急性疾患で、在宅生活が困難な方が該当します。また、年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、主治医意見書や診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
介護医療院の月額費用は、8万~25万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と医療サービス費、居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。介護サービス費は介護度に応じて月額費用は異なりますが、おおむね2万~3万円台です。医療サービス費は、医師の診察や処方、看護師の看護、薬剤師の薬物管理などの費用で、月額費用は施設によって異なりますが、おおむね4万~7万円台です。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。
介護保険が適用されない施設とは
介護保険が適用されない施設とは、民間企業や個人が運営する自立支援施設のことです。
自立支援施設には、以下の5種類があります。
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅(サ高住)
- グループホーム
- ケアハウス
それぞれの施設は、介護の目的や内容が異なるため、入所条件や入所期間、サービス内容も異なります。入所を希望される際は、よく確認しておきましょう。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、自立から要介護5までの高齢者が入居できる施設で、施設内で介護サービスを受けられます。介護付き有料老人ホームは、自立支援施設の中でも最も手厚い介護サービスが提供されている施設です。そのため、介護職員が24時間常駐し、昼夜問わず対応してもらえることが可能です。長期入所もでき、看取りを実施している施設もあります。
介護付き有料老人ホームの入所条件は、自立から要介護5までの高齢者であることです。年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
介護付き有料老人ホームの月額費用は、10万~30万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。介護サービス費は、介護度に応じて定額の料金を支払います。介護度が重いほど支払金額が高くなります。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。日常生活費は、理美容代やおやつ代など個々にかかる費用です。介護付き有料老人ホームは、介護保険が適用されない施設なので、負担限度額認定制度はありません。しかし、低所得者の場合、公的支援制度を利用することで費用を軽減できます。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立から要介護5までの高齢者が入居できる施設で、訪問介護や通所介護などの外部の介護サービスを利用できます。住宅型有料老人ホームは、自立支援施設の中でも最も自由度が高い施設です。そのため、介護職員は24時間常駐していませんが、緊急時には連絡ができるようになっています。長期入所もできますが、看取りを実施している施設は少ないです。
住宅型有料老人ホームの入所条件は、自立から要介護5までの高齢者であることです。年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
住宅型有料老人ホームの月額費用は、8万~20万円が目安です。主な内訳は、居住費・食費・日常生活費を含む生活費と、外部の介護サービス費になります。生活費は、居住費(居室の賃料)と食費、理美容代やおやつ代など個々にかかる費用です。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。外部の介護サービス費は、訪問介護や通所介護などの利用状況に応じて変動します。訪問介護や通所介護は、介護保険が適用されるサービスなので、自己負担は1割です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。また、公的支援制度を利用することで費用を軽減できます。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)
サービス付き高齢者住宅は、自立から要介護5までの高齢者が入居できる施設で、見守りや生活支援などのサービスを受けられます。サービス付き高齢者住宅は、自立支援施設の中でも最も住宅性が高い施設です。そのため、介護職員は24時間常駐していませんが、緊急時には連絡ができるようになっています。長期入所もできますが、看取りを実施している施設は少ないです。
サービス付き高齢者住宅の入所条件は、自立から要介護5までの高齢者であることです。年齢は60歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~59歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
サービス付き高齢者住宅の月額費用は、6万~15万円が目安です。主な内訳は、居住費・食費・日常生活費を含む生活費と、オプションのサービス費になります。生活費は、居住費(居室の賃料)と食費、理美容代やおやつ代など個々にかかる費用です。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり3万円前後が目安です。オプションのサービス費は、見守りや生活支援などのサービスを利用する場合にかかる費用です。サービスの内容や料金は施設によって異なりますが、おおむね1万~3万円台です。サービス付き高齢者住宅は、介護保険が適用されない施設なので、負担限度額認定制度はありません。しかし、低所得者の場合、公的支援制度を利用することで費用を軽減できます。
グループホーム
グループホームは、要支援2以上で原則65歳以上の認知症高齢者が入居できる施設で、共同生活を送りながら介護サービスを受けられます。グループホームは、自立支援施設の中でも最も家庭的な雰囲気の施設です。そのため、介護職員は24時間常駐していますが、家族的な関係を築きながら、入居者の自立を尊重しています。長期入所もできますが、看取りを実施している施設は少ないです。
グループホームの入所条件は、要支援2以上で原則65歳以上の認知症高齢者であることです。年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
グループホームの月額費用は、7万~15万円が目安です。主な内訳は、居住費・食費・日常生活費を含む生活費と、外部の介護サービス費になります。生活費は、居住費(居室の賃料)と食費、理美容代やおやつ代など個々にかかる費用です。居住費は居室タイプごとに費用が異なりますが、ほとんどの場合は多床室です。食費は施設によって異なりますが、30日あたり3万円前後が目安です。外部の介護サービス費は、訪問介護や通所介護などの利用状況に応じて変動します。訪問介護や通所介護は、介護保険が適用されるサービスなので、自己負担は1割です。グループホームは、介護保険が適用されない施設なので、負担限度額認定制度はありません。しかし、低所得者の場合、公的支援制度を利用することで費用を軽減できます。
ケアハウス
ケアハウスは、要介護1以上で原則65歳以上の高齢者が入居できる施設で、介護サービスと生活支援サービスを受けられます。ケアハウスは、自立支援施設の中でも最も介護サービスが充実している施設です。そのため、介護職員は24時間常駐していますが、入居者の自立を尊重しています。長期入所もできますが、看取りを実施している施設は少ないです。
ケアハウスの入所条件は、要介護1以上で原則65歳以上の高齢者であることです。年齢は65歳以上であることが原則ですが、特定疾病の認定を受けた40~64歳までの方も入所できます。入所時には審査があり、面談や主治医意見書、診断書などを元に本人の健康状態、介護度を総合的に判断し、審査を通過すると入所可能となります。
ケアハウスの月額費用は、9万~20万円が目安です。主な内訳は、介護サービス費と居住費・食費・日常生活費を含む生活費になります。介護サービス費は、介護度に応じて定額の料金を支払います。介護度が重いほど支払金額が高くなります。居住費は居室タイプごとに費用が異なります。多床室、従来型個室、ユニット型個室の順に高くなっていきます。食費は施設によって異なりますが、30日あたり4万円前後が目安です。日常生活費は、理美容代やおやつ代など個々にかかる費用です。ケアハウスは、介護保険が適用される施設なので、自己負担は1割です。低所得者の場合、居住費と食費は負担限度額認定制度により軽減できます。また、公的支援制度を利用することで費用を軽減できます。
以上が、介護保険が適用されない施設と適用される施設の違いと、それぞれの施設の特徴と費用になります。入所を検討される際は、自分の介護度や希望に合った施設を選ぶことが大切です。また、施設によっては待機者が多い場合もありますので、早めに情報収集や申し込みをすることをおすすめします。施設の詳細については、各施設のホームページやパンフレットなどを参照してください。
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